[本] 起源図鑑

ディスカヴァー・トゥエンティワン

面白い読み物だったので。

どんな本か

科学系の本で、宇宙の起源から何故飲酒するようになったかなどおもしろ雑学本です。内容は全て自然科学とテクノロジー関係の話で、視点も全て理系的といっていいかと思います。物理、生物学、情報学が多めです。化学と機械工学はあまりないかなというところ。タイトルが起源なのでそうなってしまうのも仕方ないですけどね。

1トピックを見開き1ページで紹介していますが、内容はかなりギチギチに詰まっています。文書自体は小難しいことを書いてないので誰でも読めるものです。さらに言えばこの手の読み物としてもかなりわかりやすく整理されて書いてあるのが良かったですね。ただ、先程書いたように内容は自然科学とテクノロジーにフォーカスされてるのでそっち方面を全然知らないとか興味ないと言うのであればあまりおもしろくはないかも。。。

というのも”へーそうだった”のか的発見がこの本の魅力の一つだから。NHKの科学番組が好きだとか、まんがサイエンスシリーズ読むのが好きという人には本当に楽しめる本じゃないかと思います。全255ページですが、本の大きさがだいたいB5で文字が詰まってるので読み応えはあります。

因みにですがこの本を書いたグレアム・ロートン氏はニュー・サイエンティスト誌の副編集長だそうです。内容はもちろんですが翻訳も読みやすいものでした。

内容

章ごとに大まかにジャンルを区切ってあります。ここでは各章と1トピック簡単に紹介することにします。

1章 – 宇宙

やっぱここからよねという宇宙、というかこの物質世界の話です。ビッグバンのように宇宙の始まりの話からブラックホールや銀河といった天文の話も入っています。我々がモノとして扱っているものは元素から成り立つのですが、この元素がどうやって生成されたのかということも扱っています。宇宙の起源ネタは鉄板も鉄板なのである意味ではこの本のユニークさが一番薄まっている気がしないでもないですが、一個紹介します。

ブラックホールネタというとアインシュタインの一般相対性理論だとかシュヴァルツシルト半径だとか難解っぽい話が入り乱れてきます。そういった話を時系列で綺麗にまとめてあってすんなり概要がわかる内容でした。

ちなみに本の中でもう少しでブラックホールの画像が得られるのではないかという話も出てくるのですが、これは2019年4月10日にM87のブラックホールを撮影することに成功して話題になりました。科学の進歩も楽しめちゃいましたね。

国立天文台

2章 – 地球

地球の話です。地球環境っていうのは惑星の歴史として見れば本当にダイナミックに変化しています。磁極も逆転してますし、酸素濃度も気温も大きく変化した歴史があります。あと地球“圏”の内容のようで月の話もでてきます。

一つピックアップすると、どうやって酸素に満たされた地球になったのかという話。37億年前には単細胞生物が作り出したメタンで満たされていました。そして23億年ほど前に光合成を獲得します。でもここが面白くて、いきなり大気中に酸素を放出してないんですね。生物の中で酸化鉄として保持していたそう。これが後の縞状鉄鉱層なんだそうです。縞状鉄鉱層といえばオーストラリアなんかが有名(たしか観光地にもなってた気がします。なんかで読んだ)で、産業資源として用いられています。TVとかで目にするめちゃくちゃおっきいトラクターが行き来してる採鉄場とかですね。地層の由来というのもこうしてみると面白いですね。

3章 − 生命

これもまた鉄板ネタですね。ダーウィンの進化説なんかも有名でしょう。突然変異と前適応があり、そこから環境に適応できた生物が生き残っていくという話ですが面白く掘り下げてあります。

例えば何故セックスをするようになったかという話なんかもテーマとして出てきます。単純に種の生命活動としてはコストが高い(コストが高いと種が消えるんじゃないかという話)のに有性生殖を獲得した種は沢山います。これが古く考えられてた仮説や、新しい仮説であるミトコンドリア由来の進化であるといったところまで書かれています。進化学は化石を発掘したり遺伝子を追跡したりで証拠を重ねていく地道な分野ですがやっぱりはっきりしたことが分かりづらい学問かと思います。でもなんというかロマンがあって楽しいですね。

4章 − 文明

我々は街を作ってコミュニティの中で喋ったり取引したりして生きています。ではこれがどこから来たのか科学的な視点から見ています。

中でも面白いと思ったのが私達がいつからお酒を飲めるようになったかという話です。アルコールは生命にとって毒たりうるわけですが、これに適応した生命(私達も含め)の話です。自然界でもアルコール醸造は起きていてヤシが発酵してできた酒を飲む猿の話なんかが出てきます。人類にとってどう生存に有利だったかという話もベタですが出てきます。

5章 − 知識

この手の雑学ネタとしてはなんだか珍しいカテゴリな気がします。歴史科学、考古学みたいなジャンルです。私も今まで知識という括りで考えたことが無かったのですが面白かったです。

ゼロの起源という話が出てきます。「ゼロはインドが生み出した」なんて言うのは聞いたことあるかもしれませんが、それをもう少し掘り下げてゼロが存在する前の世界と、ゼロを取り入れるわけにいかなかった話なんかが書かれています。

そして面白いのがゼロを取り入れたことで数というものが完全に抽象的な存在になれたという話。存在が無いものを数えはじめたわけですね。数学はさっぱりな私ですがなるほどなーなどと頷きながら読んでしまいました。

6章 − 発明

要するにテクノロジー関係の成り立ちが主題です。ここまでくると身の回りのものがどう作られてきたのかという話になってなるほどなー感が増していきます。この章は個人的にどれも本当に興味深くて一つピックするのが難しいですが。

QWERTY配列がどうして出来上がったかという話。私も何十年とキーボードを叩き続け、JIS配列やUS配列といった違いはあれども全てQWERTY配列でした。子供の頃、まだローマ字を知らない頃から打ってたのですが幼心になんでこんなヘンテコな並びになっているんだろうと思ったことがあります。「ABC順に並べていてくれれば」「カナくらいあいうえお順にしろ」とか思いながらタイピングしたことを思い出しました。

さてそんなへんてこ配列のQWERTYがどうできたのか、そしてタイピング効率はどうなのか。もうなんだかネタバレみたいになりますけどデファクトスタンダードになることの強さなんかを知ることができるトピックでした。