本は紙で買うことにした。今決めた。

本を買いたいけれど電子書籍にするか紙媒体にするかというよくある命題の話です。もう何年もこれに悩んであまり本を買ってませんでした。忙しくて本読む暇があまりなかったからというのもあるんだけどね。

電子書籍は寝る前暗い場所でも読めるし、腕も疲れないし、持ち運びもできるし、保管スペースもとらないと良いことだらけなので使えるものなら使いたいです。

でも紙で買うことしましたよっていう話

金を払う対象はなんなの

もう散々言われてることなのでいまさらな話ですけども。

・電子書籍はサービス内で購入した本を読む権利
・紙媒体は本の所有権

というわけで同じだけお金を払ったとしても得られるものが違うというところがずっと引っかかって電子書籍にしようとはならなかったわけです。もしこれで電子書籍は所有権じゃないから大幅割引が基本とかなら全然良いけどね。実際のところはちょっと安いか同額程度というのが多いように思う。

出版社側からすれば権利保護の問題でこうしているだけでしょうから、権利が違うから安くして収入が落ちるというのは経営上ムリがあるというものでしょう。そこはよくわかります。

電子書籍サービス終了時の地獄

2010年をちょっと過ぎたくらいでポコポコ電子書籍サービスのいくつかが消えました。サービス終了ってやつです。結果どうなったかはアフィサイトの皆さんがまとめているのでおまかせする。

とにかくサービスが終了すると単純に本が読めなくなるのです。それはそうだ、電子書籍はあくまでサービスの中で本を読む権利なのだから。そして消費者もハイ、そうですか、などとはなりません。そりゃもう非難轟々になるのは火を見るより明らかなことです。そのため企業側も返金やら他サービスで読める様にするとか、そういった対応を取ってきたようです。

ただ企業側に立ってみれば、電子書籍サービスには金が沢山かかっているはずです。まずサービスの立ち上げのためには人も動かさなきゃいけないしシステムやらサイトを立ち上げる必要がある。サービスが始まってもランニングコストは当然かかる。売れた分だけ権利者に金を払っているはず。そして残った分が企業の利益になる。なので売れた分返金といってもマイナスになっていそうだな、と思ってます。

2010年過ぎの頃はまだ電子書籍もそんなに普及はしていなかったので企業の体力をもって返金がまだできる規模だったんじゃないかと。

一方で今はだいぶ電子書籍を使っている人が増えた印象があります。自分の周りを見ても、別にPCオタクみたいなITサービスにアンテナ張ってるような人じゃなくても使ってる時勢です。タブレットだって10年前と比べたら劇的に普及していてもう見慣れたもんです。電子書籍の市場を見てみるとやはり伸びている模様(下図)です。

引用:2021年紙+電子出版市場は1兆6742億円で3年連続プラス成長 ~ 出版科学研究所調べ(https://hon.jp/news/1.0/0/32230)

市場が伸びてよかったね、って言いたいところですが個人的には不穏でしかない。市場が伸びた分だけ権利を売っちゃってるわけです。サービスを終了するので返金します、と言われれば消費者も納得するでしょう。しかし返金額が売った分だけ膨大になるはずです。今後も市場は伸びていくでしょうから、どんどん全額返金のハードルは高まっていきます。

そうなると、将来電子書籍サービスが終わる時は返金に期待できず、ただただサービス終了して読めなくなるのではないかと思います。前述のように、あくまでサービス内で書籍を読む権利を売ってるわけだからむしろ当たり前といえば当たり前でしょう。サービスというもの自体も未来永劫続くなんて、市場にそんな設計はないのだからいずれ消えるのは当たり前です。

端末に既にダウンロードされてるものは読めますというのはそうかもしれないけど、電子機器には耐用年数があっていずれ間違いなく壊れます。頑張っても数年ってとこでしょう。

DRMというコンテンツ保護があるのでデータを移すというのもユーザーが勝手にできないようになってます。なのでサービス終了から数年遅れて全部読めなくなるだけの話です。

別の電子書籍サービスにユーザーとコンテンツを引き取って貰うというのも過去にはあったようです。これは今後もあるかもしれない。ただ、移動先のサービスを消費者は当然選べないでしょうし、それが気に入るかもわからないわけです。特にリーダーの出来はみんな気になるでしょう。DRMがある限りコンテンツと別にリーダーを選ぶことは不可能なのですから。

要点だけまとめると、サービスはいつかは終了する(生きてる間に起こる可能性は超高いでしょう)。終了する時には消費者にとっては嬉しくない形になるだろうと思います。

著作権保護をなくせという話ではなく

歴史のお時間になっちゃいますけども。かつては音楽でCCCDができたり、地デジのコピーワンス、ダビング10、ストリーミングにおけるDRM保護(DASHとHLSの話なんかは結構面白いです。AppleとMSのコンテンツ保護への思想が違ったりして)とアナログ時代が終わってデジタル化した頃からずっとこの手の話はあります。

インターネットが興隆したこと、デジタルという完璧なコンテンツコピーができること、そういう時代に権利者も危機感があるんでしょうね。それは尤もなことでしょう。

また商売としてもいくらでもコピーしていいよってなったら、稼げなくなってやがてコンテンツを作る人がいなくなって消費者も困ります。先に挙げた中だと音楽と動画は旧メディア(CDとかMD、DVDね)が完全にオワコンになってサブスクリプション方式のネット配信になりました。昔ほど儲かってるのかはわからないですが、今現在をみるとなんとか変革できたんでしょう。

CCCDは今でもコンテンツ保護の失敗代表例みたいな扱いです。CD-Rに焼いたりPCでデータとして扱うことを実質禁止したこと、場合によっては普通に再生するだけでも再生機器が壊れるとお粗末だったからです。権利の問題はおいておくとして、あまりに消費者の利用スタイルに合致しない形をとってしまうと失敗するという例だったのではないかと思います。

地デジ周りに関してはBS放送の失敗から始まって、闇の存在としか形容できないので割愛します。

対して本はサブスクサービスもありますが、まだ対応コンテンツは少なくイマイチな模様。私もKindle Unlimited入ってますけど、これだけで満足できるかっていうとちょっとムリがある。

余談ですが、以前Kindle Unlimitedでは購読数で利益を分配していたようですが、日本だけは漫画という読むペースと巻数が本と比べ物にならないってことで異様な状態になったっていうニュースありましたね。

兎にも角に生産者にお金がいかないと困る、コンテンツを強力に保護すると消費者は不便になる、このせめぎ合いをずっとやってきたわけです。先に挙げたサブスクの成功はいい落とし所だったんでしょう。

話を戻して一消費者として本をどうしようということ

今の状況を見ていると、出版がサブスクで網羅されることはなさそうな雰囲気です。また、DRMを外すということも権利者サイドの心情を考えるとムリでしょう。そして電子書籍の「読む権利」は消費者としちゃ心もとないものです。

ですので、紙で買って所有権を手に入れたいと思います。現時点ではそうする他になく、私の中では結論が出たのでした。消えてもいいやってものは電子も使いますけどね。

サービスが終了する時にどうするか宣言していて納得するものがあれば、その時は電子書籍で爆買いするかもしれません。はぁ、また本棚を買わないといけないな。