チェンソーマン(アニメ)はいいぞ

2010年台以降、個人的にアニメが全然楽しめなくなってほとんど見ていなかったのだが、なんとなく見たチェンソーマンがかなりいい感じだった。しかし、ネットの評判を見ると割りと散々なことが書かれているではないか。これに関しては、おそらくネガティブなことで記事を作った方が閲覧が増えるアフィサイト事情もあるのだろうとは思うが。おまけにTwitterで売上爆死してるから駄作などと言うのが流れてきたり。

自分としてはチェンソーマンのアニメはCGを取り入れつつめっちゃ画作りに挑戦していて久々にアニメを楽しめた。とりわけ感じたことはすごい!アニメ進歩してるな!である。

原作を大事にしてないという批判

初っ端からで大変恐縮なのだが、原作はアニメを見終わったあと、無料公開されているのを読んだ程度でほぼ読んでいない。

さて、この原作とイメージちゃうやろ、という批判は昔から人気原作のアニメ化で山のように見てきた光景だ。有名所だと押井守作品だとかGONZO作品だとか。この手の批判に思うのは、そもそもイメージを崩したくないのなら原作だけ見ていればいいのではないかということだ。私も読んでいた作品がその後アニメ化ということは何度か経験してきたが、本当に原作イメージを崩したくないほど好きな場合はアニメは見ていない。少なくとも原作に対する思い入れが強いうちは。もっとイメージしやすく言えば、漫画原作をドラマ化した場合、原作どおりのイメージで見れるかって言えばそんなわけないと普通思うだろう。そもそも脳内にあるキャラの声だとか世界観は自分だけのものなのだから違って当たり前だとしか思わない。原作が挿絵もない小説であれば尚更である。なのでアニメ版はアニメ版として楽しめやと、大変身も蓋もない持論を持っているわけである。

アニメは原作に忠実じゃないとだめだ!という人はご愁傷さまである。今後見るアニメにもきっと怒り狂う場面が多いだろう。歴史がそう言っているので諦めたほうがいい。

CGについて

アニメのCGもここまできたかぁというのが最初に感じたことであった。メカがCGというのはだいぶ前から形になってる印象だったが、この作品では人物だの服だのも自然にアニメとして見ることができた。そりゃCGだってこと見りゃわかるだろ?と言われれば当たり前じゃんとしか言いようがない。しかし何も手書きのようにしか見えないCGじゃないといかんのかと。今作ではちゃんと”CGを使ったアニメ”として成立しているじゃないか。マジスゴイ。

人物CGが出たての頃なんて、人形が動き回ってるだけ、輪郭線がいつでもゴリゴリにごん太で入ってて塗り絵が動いてるみたい、服が全然生地っぽくない、人物の表情は不自然、動きは生物感無しといった具合だった。チェンソーマンのアニメはCGと手書きの合せ技だそうだが、CG作品として着実に進歩して今挙げたような不自然さはかなりの部分消えているように思えた。実はチェンソーマン見た後、今のアニメってそんなすごいんだと思って他のを見てみたのが、CGがとんでもなく微妙な作品が山程ある。現時点においてこのアニメのCGはかなり高みにあるということなのだろう。

CGなんだか手書きなんだかわからんけど、これくらいかっこいい画になってればいいじゃないか。目の虹彩なんかはよく出てくるシーンだけど、こういう複雑な模様がぐりぐり動くのだからすごい。

場面説明、美術、カメラワークがすごい(ちょっとネタバレもある)

監督なのか、スタッフのどなたか分からないのだけど、押井マニアがいるのだろうか。他にも昔のアニメで似たようなものあったなぁというのがちょくちょく出てくる。意図してるのか私には知る由もないのだが。

このシーン、しばらく動きもセリフもなく環境音が入る程度。深夜の静かさと人物の距離感が伝わってきていい。この作品を見てるとちょくちょく画面が止まるのである。場面説明でもあるのだろうけど、この間がなんとも気持ち良くて気に入っている。

神回は8話の「銃声」

色々なこだわりを最も感じたのが8話である。内容がちょっとエチチなのだけど、それ以上に画がエロい。場面を端的にいえば一人暮らしの女が若い男を連れ込んでるシーン(雑すぎてごめん)である。

鏡だよ。場面説明としちゃ歯ブラシ一本から始まり、女性らしく左の鏡がちょっと立っていてここで髪セットしてんだろーなと思わせる。右側の鏡が寝たままなのは右目がなくて視界がそもそもないからからだろうか。風呂にいくってだけのシーンだけどわざわざ鏡の反射シーンでいろいろ描いてるのが実にエロいじゃないか。

濡れ場(ではないのだけど)のシーンでも女の部屋です感をこれでもかってくらい出してくる。これを見ていてなんとなくエヴァンゲリオンのミサトと加持のラブホシーンを思い出した。部屋の雰囲気を見せて濡れ場感を出してくるのはテクい演出ではないか。

これはレンズにこだわってると思われるシーン。電灯がえらく大きくなって天井も近く見えるのはカメラが中望遠で圧縮されてるからだろうか。ちなみに他のシーンでは広角になって天井が遠くなるものもある。

あまりレンズに興味がない人も読んでいるかもしれないので、ざっくり効果について書いておく。広角というのは広く写せる(画角が広い)レンズのことで、近くにあるものは大きく、遠くにあるものは小さくなる。一方で望遠はみんな聞いたことがあるであろう、拡大して写せるレンズ(画角が狭い)である。こちらは圧縮効果といって、遠くのものも大きく写る。

この二つのシーンは時系列的にも繋がってるのだが面白かった。上の画像では超広角で魚眼というほどではないけど歪曲している。この表現が8話では他にもあった。そして下の画像は後ろのノレンが大きく写る。おそらく望遠寄りなのだろう。

こういったレンズの画角をアニメにゴリゴリ使ってくるのがとても楽しいのだ。

どこからどこまでがCGなのか分からないのではあるが、カメラの位置や画角をCGなら色々試してプレビューもできるんだろうか。なんにせよ、アニメだけどその場面を撮ってるカメラの存在をいれてくるのがニクい演出であった。

応援していこうぜ

少々愚痴になってしまうが、最近のアニメはとにかくただの商売で作っているのでは、と感じてあまり楽しめなかった。そんな中で挑戦と工夫が詰まった今作には感謝したいのである。